次に研究チームは、世界各地の20か国に住む25~60歳の成人約5,000人を対象に独自のアンケート調査を行いました。
調査は各国で日照時間が同程度となる秋分の週に実施され、参加者それぞれに前夜の睡眠時間や普段の平均的な睡眠時間(昼寝を含む)を自己報告してもらいました。
また、自身の身体的・精神的な健康状態(持病の有無や気分の状態、生活満足度など)や、「自国ではどれくらい眠るのが理想的だと思うか」といった認識についても回答してもらったのです。
この個人レベルのデータを分析した結果、いくつかの重要な知見が得られました。
まず、睡眠時間が長めの人ほど健康状態が良い(持病が少なくメンタルも安定している)という傾向が確認されました。
しかしその関係は直線的ではなく、睡眠時間が長くなりすぎると健康状態が再び悪化に転じることも明らかになりました。
言い換えれば、睡眠と健康の関係は「睡眠不足も睡眠のとりすぎも良くない」というU字型(曲線)のパターンを示したのです。
適度に睡眠をとる人が最も健康状態が良く、極端に少ない場合も多すぎる場合も健康リスクが高まる——これは以前から指摘されてきた傾向ですが、本調査でも裏付けられました。
さらに注目すべきは、健康にとって理想的(最適)な睡眠時間は国ごとに異なっていたという点です。
各国のデータについて、睡眠時間と健康指標との関係を分析すると、それぞれの国において健康度(自己申告による全体的な健康感やメンタルの指標など)が最大となる「最適な睡眠時間」が存在しましたが、その長さは国によってばらつきがありました。
興味深いことに、この理想的な睡眠時間はいずれの国でも、その国の平均実睡眠時間よりも少なくとも1時間長い値となっていました。
言い換えれば、どの国の人々も現在の平均よりもう1時間多く眠れたほうが、本来は健康によい可能性があるということです。
上の表にもあるように、日本の場合は平均睡眠時間が6時間18分なので、理想的な睡眠時間の推定値は7時間18分となるわけです。