Jリーグ 写真:Getty Images

1993年、10クラブでスタートしたJリーグ。現在、J1、J2、J3の3部制で60クラブがしのぎを削り、明治安田生命とのタイトルパートナー契約のもと「明治安田Jリーグ」と銘打っている。このリーグの最大の魅力は、60クラブそれぞれが異なる成長ストーリーを持つことだ。

大都市のビッグクラブから地方の小さなクラブまで、歴史や文化、ファンとの絆を通じて、各クラブは独自の色を持っている。あるクラブはホームゲームの度に数万人もの観客動員を記録し、攻撃的なサッカーでサポーターを魅了する。一方、別のクラブは地域のコミュニティーを重んじ、子どもたちとの交流イベントを欠かさない。

Jリーグの基本理念は「日本サッカーの水準向上」「豊かなスポーツ文化の振興」「国際社会における交流や親善への貢献」の3つ。これを基盤に、各クラブは地域の誇りを背負い、独自のアイデンティティーを築いてきた。32年目のシーズンを迎え、サポーターのチャントやスタジアムの雰囲気もその歴史の中で独自の発展を遂げ、ゴール裏の雰囲気もクラブごとに異なり多様性を帯びている。

ここでは、Jリーグ全60クラブがどのように独自のアイデンティティーを紡いできたかを、いくつかのクラブの好例と共に探る。


川淵三郎氏 写真:Getty Images

根底に「Jリーグ百年構想」

Jリーグのアイデンティティー形成の根底には、1996年に川淵三郎初代チェアマンが唱えた「Jリーグ百年構想」がある。この構想は当初はキャッチコピーに過ぎず、Jリーグブームが過ぎ去ったことで一度は萎みかけたが、後に地域に根差したスポーツ文化の確立を目指す長期計画となった。

川淵氏の「Jリーグの理念を伝えたい」という思いを言語化し、地域社会とクラブが一体となってスポーツを通じた豊かな社会を築くことを目指した。