研究者たちは年齢や性別などの背景要因を統計的に統制したうえで、BDSM実践群と非実践群のあいだに人格・愛着・幸福度などで有意差があるかを検定し、さらにBDSM内の特定の役割(例:支配側vs従う側)による心理傾向の違いも分析しました。
その結果、BDSM実践者は非実践者に比べて心理測定の各尺度でより良好な傾向を示すことが明らかになりました。
具体的にはBDSM実践者は一般層よりも以下の特徴が見られました。
①安定型の愛着スタイルが多い(不安定な愛着〔不安型・回避型〕が少ない)。
②外向性(Extraversion)・誠実性(Conscientiousness)・開放性(Openness)のスコアが高い。
③協調性(Agreeableness)は非実践者よりやや低い傾向があった。
④神経症傾向(Neuroticism)が低い。
⑤拒絶感受性(他者に拒否されることへの敏感さ)が低い。
⑥主観的幸福度(ウェルビーイング)が高い。
要するに、BDSM実践者たちは愛着がより安定し、ネガティブな特性が弱い一方でポジティブな性格特性が強いという、従来の偏見に反した非常に機能的な心理プロフィールを持っていたのです。
こうした全体傾向は2013年の先行研究と概ね一致しており、今回それが約1,900人規模の新たな集団でも再現された形になります。
興味深いのは、BDSM内での役割の違いによる傾向です。
全体として「支配する側」すなわちドミナント役の参加者が最も安定した心理的特徴を示しました。
とりわけドミナントは愛着スタイルが非常に安定しており(この傾向は女性ドミナントで顕著)、さらに外向性や誠実性、主観的幸福度が高く、神経症傾向や拒絶感受性が低いという極めて機能的な心理プロフィールを備えていたのです。
一方、「従う側」すなわちサブミッシブ役や両方を担うスイッチ役の人々は、多くの指標でドミナントと非実践者の中間的な値を示しました。