これが、「消費税は預り金ではない」との主張の根拠ですが、それを預り金であるかのように国民の啓蒙したのは、「財務省のウソ」というよりは、消費税の転嫁をスムーズにすることで事業者の負担を軽減するためにされたことなのです。
「この上乗せされた消費税は、忌々しいが、事業者は、単に国に届けるために税金を預かっただけ」だという認識を全国民が持つことで、「それじゃ仕方がないな」と負担をしてくれていたわけです。
もし、消費税を上乗せした請求書に「この消費税は私の売上の一部です」などと書いたら、果たして、得意先も消費者もその支払いに納得してくれたのでしょうか。
あなたが、抵抗なく、消費税を上乗せして請求できていたのは、実は「大嫌いだ」と反発しまくっていた財務省のおかげだったのですよ。
国の配慮で事業者は助かっていたのに、今になって「消費税は預り金じゃない」との建前を振りかざすのは、まるで「親の心子知らず」といったところでしょう。
ということで、法的には、消費税は預り金ではなく、事業者の売上を課税標準とする「直接税」であるものの、「預り金的なもの」であるとの啓蒙や消費税の価格への転嫁を促す関係法規や公取委の監視などにより、実際には、消費者の負担する「間接税」として機能させているわけです。
消費者が消費税の負担をこれだけ強く感じていることこそが、その証と言ってもよいでしょう。
このように実質的に間接税として機能させた結果、経済産業省の継続的な調査による最新のデータでは、事業者間取引での消費税について「全て転嫁できている」が93.1%、「全く転嫁できていない」が1.6%となっています。
消費税の転嫁状況に関するサンプル調査の結果を取りまとめました|経済産業省
なんだよ、意外とみんな、消費税を上乗せして請求できているじゃないですか。
つまり、現状で消費税の価格への転嫁ができていない零細事業者というのは、実は少数であり、相当に立場が弱いことが伺えます。