
President of Russiaより
ロシアの「ウクライナ戦争」開始の政策決定について、最高権力者でしばしば独裁者と呼ばれるプーチン大統領の思考がいろいろと推察されています。
我が国では、ある著名な旧ソ連地域研究者が、この事実をミステリアスだとして、「政治的整合性が全くないんですよね。全く論理的にメリットがないことであって、それをやることによって何の得もないわけですよ。どう考えても」とある雑誌のインタヴューで答えています。
はたしてプーチンとかれの側近たちが、ウクライナに攻め込むのを決めたことは、謎であるばかりでなく、国益に反する非合理的な行為だったのでしょうか。もし、こうした推論が正しいとすれば、プーチン政権のロシアは政治的に説明できない国家であり、したがって、何をやるか分からないモスクワには論理的な対応ができなくなるという、深刻で解き難い問題にわれわれは直面することになるはずです。
本当にそうなのでしょうか。わたしは、そんなことはないと判断しています。なぜならば、プーチンの決断は「政治心理学」で多くを説明できるからです。
残念ながら、日本の国際政治学・国際関係論で心理学を取り入れる研究は、あまり見かけませんが、この分野で世界をリードするアメリカでは、かなり前に「行動国際関係論(Behavioral International Relations)」が台頭した結果、心理学を取り入れた行動経済学のように、次々と画期的な研究成果が生み出されるようになりました。
大胆にいえば、戦争などの出来事を分析するために、アメリカの政治学者が心理学の知見を使うのは、ごく普通のことなのです。そして、こうした学際的アプローチの最大のメリットは、われわれが直観ではナゾに思える政治指導者の行為を論理的に説明することを可能にしてくれることでしょう。