だから追加のうち1章分の候補は、この3年間のモデル事業の顛末を記録しておくということにした。それは第3章「福祉資源としての介護保険」として収録した。

老年化指数で少子化が高齢化の促進要因と知る

もう一つは『高齢社会・何がどう変わるか』(1995)の準備過程で、高齢化の促進要因として少子化があることに気がついていた。なぜなら、

という公式から、出生数の減少と死亡者の増加の同時進行によって総人口は減少するからである。

95年の国勢調査では子ども人口(年少人口数)は2003万人まで低下しており、一方で高齢者数は1828万人にまで増加してきていた。老年化指数(高齢者人口を分子として年少人口を分母とする比率)は91.3までに上がっていて、2000年では119.1となって、2025年では実に265.0までに増大しており、高齢者圧力がますます強まってきたことになる。

「子育て共同参画社会」を初めて使用する

当時も日本の少子化克服には、30年間定番の位置を占めた待機児童ゼロ作戦や仕事と家庭の「両立ライフ」の推進が叫ばれてはいたが、国民全体にわたる社会的不公平性の解消という観点は皆無であった。

しかし私は、男女、世代、都市と過疎地域、既婚者と未婚者、両立ライフ実践者と専業主婦などの両方の立場に配慮して、「社会全体」で「子育て共同参画社会」づくりを目ざすことが、「少子化する高齢社会への軟着陸」の指針になると当時から考えていた。

森永卓郎「少子化メリット論」

ただ97年時点の国民世論は、まだ少子化にはメリットもあればデメリットもあるという段階であり、先般亡くなられた森永卓郎氏などは、いわば積極的な「少子化メリット論」の代表的論者であった。

森永氏は少子化のメリットとして、①住宅問題の解消、②財政の好転、③通勤地獄の解消、④レジャーコストの減少、⑤高齢者や女性の基幹的雇用の促進、⑥交通渋滞の解消、⑦食糧自給率の向上、⑧自然環境の維持、⑨大都市集中の緩和をあげられていた(森永、1997)。