今田さんから「豊楽会」の長続きの秘訣も特別に教えてもらった。いくら「向こう三軒両隣り」の関係であっても、①それぞれのプラバシーには踏み込まない、②子どもとは「バカ話が出来ないが、ここでの集まりではバカ話も積極的にする」、③それぞれの家の玄関に、緊急入院の際に必要な「身の回りのものと若干の現金」を、「病院用」と大きく書いたダンボールに入れて置いておく、の3点であった。
確かに全員が一人暮らしであるので、③の準備があれば、みんなで「すぐに対応」できる。だから今までのところ「孤独死」はないとのことであった。
新書版でまとめたい
学生の頃から、パッペンハイム『近代人の疎外』(岩波新書、1960)、丸山眞男『日本の思想』(岩波新書、1961)、中根千枝『日本のタテ社会』(講談社現代新書、1967)など新書版の名著を読んできたので、これまで紹介したアメリカDCSSでの体験、日本一長寿県である沖縄県と長野県での調査結果、単独で調べた余市町の「豊楽会」の成果などを「新書版」で広く訴えたいと願うようになった。
『人間にとって都市とは何か』(NHKブックス)を手掛かりにした
95年には講談社現代新書で『高齢社会・何がどう変わるのか』を出してはいたが、内容が重なることを恐れて、他社の新書版を候補として思い浮かべた時に、磯村英一『人間にとって都市とは何か』(NHKブックス、1968)を書棚の隅で発見した。
磯村先生は日本の都市社会学の先覚者であり、たくさんの研究書と一般書を刊行されていたが、これは学部の「卒業論文」準備の際に読んだ経験があり、「都市」に関心をもった私にとって貴重な指針になったことを思い出した。
NHKブックス編集部に持ち込んだ
ともかくも目次と一部の原稿を編集部あてに送ったら、向坂編集長から電話があり、この企画はタイムリーなので、もっと話を聞きたいと札幌にお越しになった。その際、どうしてNHKブックスからの出版にしたいのかを尋ねられ、学部卒論で磯村本を精読した経験を話したら、納得されたようであった。