施設の建物や設備は日本の類似施設と比べても、格段に優れていたわけではないが、サービスメニューの豊富さと無償ボランティアの活動が目についた。
ともすれば、人種問題(レイシズム)と高齢者問題(エイジズム)が合わさって深刻化する危険性を帯びている中で、金銭面だけではなく「訪問プログラム」を含めた活発な各種サービスの提供がなされており、たくさんのボランティアがそこで活動していた。広報担当からの簡単な説明では、人種問題と高齢者問題の深刻さは聞き取れなかった。
沖縄調査に参加する
話は少し前後するが、台湾・台北調査をしていた1996年には、長寿社会開発センターの「沖縄・長野調査」にも誘われ、那覇市と今帰仁村なきじんそんに出かけ、一月遅れで長野県富士見町にも出かけ、その後も数年かけて何回か通った。
これはまず70歳代の健康な高齢者のライフスタイルを観察することから、男女ともに世界一の長寿であった沖縄と同じように長寿であった長野の高齢者にその秘訣を学ぼうという問題意識から始まった。
長寿社会開発センターが集めた公衆衛生学、社会学、心理学、社会福祉学などの専門家の合同調査であり、1997年度末までの2年間継続した。この縁で、それから20年間、センターが毎年刊行する『生きがい研究』の編集委員(後半は委員長)を引き受けることにもなった。
日本一長寿県への関心が芽生えた
97年8月中旬に帰国して、アメリカ体験を少しまとめたところで、9月から長寿県沖縄と長野での調査が再開した。事前に資料を読むと、ある時期まで沖縄県は男女ともに世界一の長寿県であったが、その頃は長寿県の男性1位は長野県で、2位は沖縄県、女性の1位 が沖縄県で、2位が長野県であった。
そのため、この経験を活かして、3年後にこの両県で日本一長寿の理由を探るというテーマで、私個人の科学研究費の申請をすることになる。
ただし、内科や循環器などの医学や公衆衛生学からも同じような「日本一の長寿」の原因が探求されていた時代だったので、図1のような「高齢者集合図」を作成して、このうちのH:在宅健康者(D:一人暮らし、F:夫婦のみ、T:3、4世代同居)を主な研究対象に位置づけた。

図1 高齢者集合図 (出典)金子、1998:20.