本文でも社会学の「社会的ジレンマ論」を使い、「社会にとって利益があることでも、個人にとっては不利益になる」(逆もまた真)を「少子化」論でも応用していた。それで、「あなた」という読者個人にこの「社会的ジレンマ」をしっかり受け止めていただければ幸いだという趣旨で、この書名に賛成した。
結果的には読者の「あなた」は増えて、6年間で6刷まで行った。通常の新書版ではなかったが、それでもハードカバーの専門書とは異なった書き方と増補できた内容によって、多くの読者を得ることができた。
おわりに
末尾では、望み豊かな「高齢社会」創造のために、マザー・テレサの言葉やロックフェラーの「60歳の10原則」(表1)なども紹介した。これは高齢者だけではなく、すべての日本人にも通用するライフスタイルと考えたからである。読者として新しい縁が生じた「あなた」に、著者からのささやかなプレゼントのつもりであった。

表1 ロックフェラーの「60歳の10原則」 (出典)金子、1998:231.
【参照文献】
長寿社会開発センター編,1997,『沖縄長寿総合調査報告書』同センター. 金子勇,1998,『高齢社会とあなた』日本放送出版協会. 森永卓郎,1997,『<非婚>のすすめ』講談社. 週刊東洋経済編集部,2025,『週刊 東洋経済』第7228号(4月19日).
・時代解明の「縁、運、根」の社会学:問題意識と方法 ・『コミュニティの社会理論』の「縁、運、根」 ・『高齢化の社会設計』の「縁、運、根」 ・『都市高齢社会と地域福祉』の「縁、運、根」 ・『マクロ社会学』の「縁、運、根」 ・『高齢社会・何がどう変わるか』の「縁、運、根」 ・『地域福祉社会学』の「縁、運、根」