加えて、「若いころによく遊んでいたオスのほうが、オトナになってからメスとの交尾にたくさん成功する」という仮説も立てました。
チームはこれらの仮説を、32年にわたるフィールド調査データと、遺伝子解析の技術を組みあわせ、仮説の検証に取り組みました。
よく遊ぶオスほど、大人になってメスとの交尾に成功していた!
研究チームはまず、「交尾ごっこ遊び」において、オスが、オス役とメス役をどれぐらい担うかについて調べました。
オスだけが参加する交尾ごっこ遊びでは、オスはオス役とメス役を交互に行うことがわかりました。
オスからすれば、交尾の練習になるのは当然、オス役をしているときに限るので、メス役ばかりを担うオスはいないということです。
一方、オスとメスが参加する交尾ごっこ遊びでは、オスはオス役ばかりする傾向にありました。
つまり、オスは交尾ごっこの参加者の性質に応じて、できるだけオス役を担うことで、交尾の練習をしていることが示唆されます。

この交尾の練習仮説を支持するために、チームは音にも注目しました。
ミナミハンドウイルカは、メスへとアプローチするときに「ポップ音 (pop sound)」と呼ばれる音を出します。
この音は、実際にメスの動きをコントロールする機能をもっているために、オスからメスへの口説く文句のようなものです。
このポップ音の音響学的な特性を、まだ若いオスと、既に交尾に参加しているオトナのオスで比較しました。
その結果、「若いオスのポップ音は、大人に比べて、持続時間が短く、音と音の間隔もばらばらである」ことがわかりました。
つまり、若いオスの口説き文句は、オトナほど洗練されていないことが示唆されます。
