このようなプロレタリアート独裁すなわち共産党一党独裁が自由と民主主義に基づく「言論の自由」と対立し矛盾することは明らかである。

日本共産党と「言論の自由」

日本共産党は、かつて自民党から「自由社会を守れ」との激しい所謂「反共攻撃」を受けたため、1976年の第13回臨時党大会で「自由と民主主義の宣言」を行い、複数政党制、政権交代、信教の自由などの基本的人権を擁護発展させる立場を宣言した(日本共産党中央委員会著「日本共産党の70年」下巻50頁)。

しかし、日本共産党は、現在も党規約2条でマルクス・レーニン主義(「科学的社会主義」)を党の理論的基礎とし、党綱領で「社会主義をめざす権力」(改定党綱領一七)と称して、プロレタリアート独裁を容認している(不破哲三著「人民的議会主義」241頁)。

そして、マルクス・レーニン主義の核心は暴力革命とプロレタリアート独裁であるから(前掲「国家と革命」432頁、445頁)、日本共産党がマルクス・レーニン主義を理論的基礎とし、プロレタリアート独裁を容認している限りは、「政府当局者に対する批判の自由」(前掲「共産主義批判の常識」)である「言論の自由」と対立し矛盾することは明らかである。

「日本共産党の研究」を出版した評論家立花隆氏への「攻撃」

共産党の「言論の自由」抑圧に関する具体的事例がある。

評論家の立花隆氏は、「日本共産党の研究(上巻・下巻)」(昭和53年講談社)を出版し、日本共産党の戦前の所謂「リンチ共産党事件」等を取上げて批判したところ、「反共分子」のレッテルを貼られ、党組織を挙げての狂気じみた激しい「文春反共デマ宣伝」攻撃を受け、共産党が国家権力を握った状態の下であれば、私に何が起きたかわからない、との恐怖の体験を述べている(同書上巻1頁以下、下巻480頁、502頁)。

これは共産党による「言論の自由」に対する通常の「反論権」を超えた不当な組織的攻撃であり深刻な問題と言えよう。立花氏は、また「近代政治史を専攻し、反体制運動史を研究していた若い研究者が、私に加えられた党組織を挙げての攻撃を見て、共産党を歴史的な研究対象とすることに恐怖を覚えたといい、私自身も慄然とした。」(同書下巻480頁)と述べている。