つまり、生きた細胞の中でいつ・どこでこれらの構造が現れるのか、条件によって変わりうるということです。

またマコヴァ教授は「ゲノムの機能を考える上で、近年は配列だけでなく構造にも目を向けるべきだという考え方にシフトしつつあります」と語っています。

「我々の研究が、この未知のDNA構造の機能解明に向けた足がかりになれば嬉しく思います」とも述べています。

今回明らかになったように、ゲノムの中には長らく手付かずだった未知の領域が存在し、そこには生物の多様性や疾病に関わる秘密が隠されているかもしれません。

最新技術によってその扉が開かれつつある今、DNAの立体構造という新たな視点から生命の設計図を読み解く試みが加速しています。

本研究の成果は、ゲノムの複雑さを解明し、人類の進化の謎に迫るだけでなく、遺伝性疾患の理解や治療法開発にも将来つながっていくことでしょう。

DNAの二重らせんのその先に何があるのか——その探求は始まったばかりです。

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元論文

Non-canonical DNA in human and other ape telomere-to-telomere genomes
https://doi.org/10.1093/nar/gkaf298

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部