DNAといえば二重らせん構造が有名ですが、実はそれだけではありません。

アメリカのペンシルベニア州立大学(PSU)で行われた研究によって、ヒトを含む類人猿のゲノムにおいて、通常の二重らせん(B型DNA)とは異なるさまざまな折れ曲がった“非B型DNA(non-B DNA)”が数多く潜んでいることが明らかになりました。

これら折れ曲がったDNAは一体どんな役割を担っているのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年4月24日に『Nucleic Acids Research』にて発表されました。

目次

  • 未解読8%のパンドラ開封
  • 二重らせんを超えた裏世界へようこそ
  • “第2のゲノムコード”をどう読む?

未解読8%のパンドラ開封

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この図は染色体のある一画を横に切り取り「どこにどれだけ“折れ曲がるDNA(非B型DNA)”が潜んでいるか」を一目で示した地図です。下段の帯は染色体の実体を表し、濃い色になっている部分は T2T 技術で新たに解読された“空白の8%”を指しています。その上に描かれた青赤の二重らせんは通常のDNAで、ところどころにフォーク形や丸い結び目、ヘアピン状のアイコンが差し込まれており、これらが左巻きZ-DNAやG4(四本鎖構造)、ヘアピンなどの非B型DNAを象徴しています。さらに最上段の緑色の折れ線グラフは「非B型DNAの密度」を示しており、テロメア側のリピート領域、染色体の要石であるセントロメア、遺伝子スイッチのエンハンサー、複製のスタート地点、転写の出発点プロモーターなど、機能的に重要なエリアでピークが高くなることが見て取れます。/Credit:Non-canonical DNA in human and other ape telomere-to-telomere genomes

ヒトの全ゲノム解読が初めて達成されたのは2001年ですが、実はそのとき解明されたのはゲノムの約92%に過ぎませんでした。