この傾向はどの類人猿でも共通しており、基本的な分子構造の「青写真」は霊長類で広く共有されているようです。

一方で種ごとの違いも見つかりました。

ゴリラのゲノムは他の類人猿に比べ反復配列の占める割合が多く、それに伴って非B型DNAモチーフの数も際立って多いことが判明しました。

研究の筆頭著者であるペンシルベニア州立大学博士研究員のリネア・スメズ氏は「今回、これらのゲノムにおいて非B型DNAを形成しやすい配列モチーフの全体像を把握できました」とコメントしています。

また解析によれば、ゲノム中のおよそ1割前後が、潜在的に非B型構造を形成しうる配列で占められていることもわかりました。

たとえば性染色体ではX染色体で約1割、Y染色体では最大3割以上にも達するというデータがあります。

“第2のゲノムコード”をどう読む?

“第2のゲノムコード”をどう読む?
“第2のゲノムコード”をどう読む? / Credit:Canva

新たに描き出された非B型 DNAの地図から浮かび上がるのは、ゲノムの「裏側」に広がるダイナミックな世界です。

非B型構造はDNAを不安定にし、突然変異や染色体の切断・再編成(組み換え)を引き起こしやすい性質があります。

こうした再編成は生物の進化を促す原動力になり得る一方で、時に遺伝疾患やがんの原因にもなります。

実際、21番染色体の一部が別の染色体に付け替わって起こるタイプのダウン症では、その切断点となる領域にZ-DNAモチーフが通常の97倍も多く存在することが示されました。

この事実は、非B型 DNA構造が染色体の「切れやすさ」に関与している可能性を示唆しています。

ただし、因果関係を証明するにはさらなる研究が必要です。

今回の研究では、予測される非B型 DNA構造のうちごく一部のみが実験的に確認されましたが、大半の構造については今後の検証に委ねられています。

マコヴァ教授は「ある特定の配列で非B型DNA構造が実際に形成されるかどうかは、細胞の種類、発生の段階、その配列のメチル化など文脈(コンテクスト)に依存する可能性が高い」と指摘します。