進化医学とは、「病気を“今だけの不調”ではなく、“過去の進化の名残”として読み解く」学問です。

たとえば発熱や炎症の過剰反応は、祖先が感染症と戦うために進化で獲得した“安全装置”の暴走と考えます。

この視点を取り入れると、症状を単に抑えるのではなく、なぜそうした反応が起こるのかを理解し、より根本的な治療や予防策につなげられるのです。

であれば、火傷治療の研究においても、この進化の背景を踏まえることが重要になるでしょう。

実際、今回特定された遺伝子や炎症経路は、火傷による炎症を抑えたり治癒を促進したりする新たな治療標的となる可能性があります。

遠い祖先が焚き火を囲んだ夜、その小さな火傷を乗り越えてきた経験が、いま私たちの細胞の中に息づいていると考えると、進化のドラマに改めて驚かされます。

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元論文

Selection through burn injury hypothesis
http://dx.doi.org/10.13140/RG.2.2.15059.69920

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部