OASL:抗ウイルス物質であるインターフェロンの作用を強化します。
これらはいずれも火傷後の感染予防や治癒促進に重要なプロセスであり、人類の系統でこうした遺伝子に変化が蓄積していた事実は、火傷への適応進化を裏付けるものと言えるでしょう。
さらに興味深いことに、この研究では人類の集団間(アフリカ、ヨーロッパ、東アジア)の遺伝情報を比較し、火傷関連の遺伝子に地域ごとの選択の偏りが見られるか調べました。
その結果、地域によって異なる遺伝子に進化の痕跡が示唆されました。
例えば、アフリカ集団では創傷治癒や瘢痕形成に関連する遺伝子に特徴的な選択のシグナルが見られました。
この結果から、たとえばアフリカの集団は露天のかまどや金属・陶器づくりなど、高温に直接触れやすい「点的・高温接触火傷」が多かったため、早く硬い瘢痕を作って傷口を閉ざすことが有利だった……というような推測が成り立ちます。
一方、ヨーロッパ集団では免疫細胞の動員や細胞膜修復に関与する遺伝子に特徴的な選択のシグナルが見られました。
こちらからは、寒冷なヨーロッパ地域では長い冬に屋内で火を絶やさず維持する文化が発達し、飛び火や小さな煤火で「慢性的・低温の擦過火傷」が繰り返し起こったため、素早い炎症誘導と細胞膜の微小修復が選好された……という推測が可能です。
研究チームも、これが過去に地域ごとで火の利用方法や頻度が異なっていた歴史を反映している可能性があると述べています。
火の遺伝子(火傷用)は進化医学においても重要

こうした遺伝子的適応は、人類が軽い火傷に対して特に強力な炎症反応で立ち向かうよう進化したことを示唆しています。
炎症反応とは、外傷や感染に際して体が起こす発赤・腫れ・痛みなどを伴う免疫反応のことです。
小さな火傷では、この炎症が素早く起こることで傷口を消毒し、細菌感染を防ぎ、組織の再生を促します。