なにせ女性を犬扱いし、口答えするならトランス差別だからナチスと同じとまで言い放ったというから、すさまじい。被害の規模がだいぶ違うとはいえ、「ウクライナで抵抗しているのはネオナチ」と公言する某国の独裁者(ただし、遠からず復権予定)を思い出させる。

映画『ファンタスティック・ビースト』のエズラ・ミラー、ホロコースト生存者の子孫を「ナチス」と侮辱
今年3月にハワイで逮捕されて以来、事件が続いているエズラ・ミラー。あるドイツ人女性がエズラとのトラブルを雑誌に告発、物議を醸している。

ミラーはナディアに「座れ」と命令したそう。ナディアが「犬に言っているみたいだ」と怒るとミラーは「ああ、俺は犬に話している」と返答。ナディアが「そういう風に話すなら部屋を出ていって」と求めるとミラーは彼女を「トランスフォビアのナチス」と罵ったという。

ナディアはナチスのホロコーストを生き延びた人の子孫。そのためこの言葉にとりわけ大きなショックを受けたという。

「私はミラーに私がホロコーストの生存者の子孫だと話したのを覚えているかと尋ねた。するとミラーは私に向かって『覚えている。でも俺の家族は何人死んだ?』と言った。これを聞いて私は『ああそうか、これは誰が一番トラウマを負っているかというゲームなんだと思った』」。

強調を付与し、段落を改変

実はこの人が出た『ウォールフラワー』(2012年)は、14年からぼくが病気で働けない間に見て印象に残り、励まされた映画のひとつだった。そこですばらしい演技を見せた人が、いつしかこうしたほとんど「無敵の人」の状態で、ハラスメントを続けていたと知ると、暗鬱な気持ちになる。

こうした映画界のスキャンダルの教訓は、たとえばトランス女性といったなんらかの属性を根拠に、批判したら差別になるからと相手を黙らせるポジションを作ってはいけない、ということだ。それは、単なる芸能ゴシップにはとどまらない。