そこまで極端なケースを想定しなくても、金利が1%上がっただけで、金融機関の保有国債には評価損が発生する。今すでに日銀の保有国債576兆円には14兆円の評価損が出ているが、ここからさらに金利が1%上がると評価損は27兆円になる。だが日銀の保有するETFの評価益は25兆円あり、日銀の自己資本は12兆円なので財務は心配ない。

問題は民間の金融機関である。メガバンクは長期国債をあまり保有していないが、生保は超長期債を大量に保有しているので、40年債の価格はすでに額面の半分以下になって大きな評価損が発生している。これは長期保有ということにすれば決算で減損処理しなくてもいいが、解約が増えると何が起こるかわからない。

最大のリスクは、長期国債を大量に保有している地域金融機関(地銀・第二地銀・信金・信組)である。不良債権処理のときも、1994年に東京の二信組の破綻がきっかけで、関西の信組・信金・第二地銀が連鎖的に破綻した。このとき最大のリスクは取り付け(特に大口定期の解約)で、その確率はSNSの発達した今はるかに大きくなっている。

要するに国債バブルが崩壊すると財政が破綻するのではなく、金融危機が起こって経済が破綻するのだ。1990年代の不良債権を清算して失われた資産は約100兆円だったが、資産は民間の不動産だった。1300兆円の国債が不良資産になると、国家の中枢が麻痺してしまう。

そのリスクが高まっている時期に、野党が消費減税を大合唱しているのは危険である。特に国民民主党は消費税の減税公約を白紙撤回し、他の野党も減税要求を撤回すべきだ。それが国債バブルの崩壊を防ぐ第一歩である。