このような不安定さを補っているのが、原子力大国フランスという「助け舟」の存在です。ヨーロッパでは、そうした周辺国との広域連系によって、このような電源構成が成り立っています。一方、日本では、こうした「電気の融通」ができないため、仮に1年に1日でも同様の発電不足が起これば、即座に大規模停電が発生するリスクがあります。

イギリス

最後にイギリスを見てみます。図6は、イギリスの総発電量と総需要を示したグラフです。少し古いデータですが、2021年6月7日~13日のものを使用しています。

不思議な点があります。それは、イギリスのデータが2021年6月までは総需要が約40,000MWだったのに対し、7月以降は約1,000MWと、1/40程度に激減している点です(図6と図7の青丸で囲った数値を比較してください)。さまざまな資料を調べましたが、明確な理由は見つかりませんでした。

図6 イギリスの総発電量と総需要のグラフ(2021年6月7~11日)Energy-chartより

図7 イギリスの総発電量と総需要のグラフ(2025年4月28日~5月4日)Energy-chartより

推測ですが、イギリス(イングランド)とスコットランド、アイルランドは送電系統を一体で運用しているものの、2021年7月以降のデータでは、これらを計算上分離し、イギリス本土の一部のみのデータをEnergy-chartsに提供しているのではないかと思われます。それにしても、あまりに小さな値です。加えて、図7の発電内訳ではLNGと風力しか表示されておらず、イギリスの全体像を正しく反映しているとは言い難い内容です。

図6を見ると、デンマークほどではありませんが、イギリスも国内発電だけでは需要をまかないきれておらず、大量の電力をフランスから輸入して補っている様子が確認できます(図8)。また、2021年の段階ですでに石炭火力発電所は老朽化によりほとんど稼働しておらず、実質的に稼働停止状態であったこともわかります。

図8 イギリスの電力輸入先(2021年6月7日~13日)Energy-chartより