注目すべきはLNG火力の出力の変動です。日中の12時前後、各国で太陽光発電が余り、電力価格が安くなる時間帯には、自国のLNG火力の出力を抑えて、安価な電力を多く輸入しています。一方、電力価格が高騰する18時~22時頃には、自国のLNG火力をフル稼働させ、輸入量を減らしています。
このように、イタリアは自国内の電力不足を逆手に取り、太陽光電力の供給過剰によって価格が下がる時間帯には輸入を増やし、価格が上がる時間帯には自国の火力でまかなうという、非常に合理的な運用を行っています。結果として、太陽光発電を大量に導入しているドイツなどが抱える発電コストのゆがみをうまく活用し、自国の発電単価を引き下げている構図が浮かび上がります。
デンマーク次に、ドイツと並びNetZero先進国とされるデンマークを見てみます。
IEAの資料によると、デンマークでは年間の発電量の約70%が太陽光と風力によるものであり(図4)、そのうち風力が半分以上を占めています。図4だけを見ると、今後さらに導入が進めば再生可能エネルギー100%も実現可能ではないかと思えるかもしれません。

図4 デンマークの燃料別発電実績(2023年)IEA資料より
しかし、図5には、4月21日から23日までの総発電量と総需要の時系列グラフを示しています。この期間、デンマーク国内の総発電量は総需要の半分にも届かず、不足分の大部分はフランスなどからの電力輸入に頼っていました。

図5 デンマークの総発電量と総需要のグラフEnergy-chartより
たしかにこの週は風力発電の出力が低調だった週であり、逆に風力が強い週には、自国の総需要を超える発電量を記録し、電力を輸出しているケースもあります。しかし、こうした風力の出力が不安定になる週は、毎月1回程度の頻度で発生しており、風況が安定しているといわれるヨーロッパにおいても、実態はこのような状況です。