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2025年4月28日にスペインとポルトガルで発生した停電以降、ヨーロッパの発電状況を確認できるサイト「Energy-charts」を時折チェックしています。そこで気づいたことがあります。

NetZero推進派の人たちがよく言うのは、「イギリスは石炭火力の全廃を宣言した」「ドイツは原子力を全廃した」「デンマークは再生可能エネルギーだけで発電の70%をまかなっている」「それに比べて日本はなぜ同じことができないのか。やる気がないのでは?既得権を守ろうとする勢力が抵抗しているだけでは?」という主張です。

しかし、図1に示すように、ヨーロッパでは各国が送電線で広く連系しており、加えて、原子力大国フランスが安価な原子力電力を周辺国に供給しています。このように、日本とは電力システムの前提が大きく異なっており、単純に比較するのはナンセンスです。

図1 ヨーロッパの各国連系状況

そこで今回は、そうした前提の違いを、各国の総発電量および総需要のデータから検証してみたいと思います。

EU各国の総発電量と総需要をチェック

ドイツ

図2は、ドイツの1週間における総発電量と総需要を示したグラフです。総発電量は積み上げ式の面グラフで、総需要は黒の折れ線グラフとして表示されています。

図2 ドイツの総発電量と総需要のグラフEnergy-chartより

このグラフにおいて、面グラフの方が折れ線より上にある時間帯は、電力を国外に輸出している時間帯を示し、逆に折れ線の方が高い時間帯は、電力を輸入している時間帯となります。

注目すべきは、日中の12時前後、電力価格が比較的安い時間帯に電力を輸出し、深夜の電力価格が高い時間帯に電力を輸入している点です。これにより、結果的に国富が国外へ流出している状況が読み取れます。

イタリア

図3は、イタリアの総発電量と総需要を示したグラフです。イタリアは全時間帯を通じて電力が不足しており、常に外国からの電力輸入に依存しています。

図3 イタリアの総発電量と総需要のグラフEnergy-chartより