さらに、xGは選手個人の得点力を評価する際にも有用だ。実際のゴール数がxGを上回る選手は、チャンスを確実に決める能力が高い。例えば、プレミアリーグ、トッテナム・ホットスパーのエースで韓国代表FWのソン・フンミンは、2022/23シーズンでxG15.8に対し23ゴールを記録し、難易度の高いシュートを決める能力を数字で示した。
一方、xGが高い場合に決定力不足の可能性がある。ボールを支配し、攻め込みながらも勝ち点に繋げられないチームの多くは、xGに対し実際の得点が少ない。
例えば、5月17日に行われた明治安田J1リーグ第17節、鹿島アントラーズ対清水エスパルス(県立カシマサッカースタジアム/1-0)の試合におけるxGは、勝利した鹿島が0.78に対し清水は1.58だった。試合は鹿島FW鈴木優磨が前半7分に先制点を挙げたが、ハーフタイム時点でのxGが鹿島0.44、清水0.57。後半は清水の一方的な展開となり、鹿島が何とか1点を守り切った形となった。清水はこの試合で17本ものシュートを放ったが枠内シュートは1本にとどまり、鹿島DFを崩した上で放たれたFW乾貴士やMF矢島慎也のシュートも枠を捉えられず、1点が遠い敗戦になった。
このデータから、清水は試合を支配しながらも得点を挙げることが出来ず、鹿島は枠内シュート2本中の1本を決め、少ないチャンスを生かしたと結論付けられる。こうした分析は、試合を読み解く手助けとなり、観戦の楽しさを増す可能性がある。

xGに続く新たなスタッツの登場
xGがサッカー界で広まった影響で他にも多くの新指標が登場している。
アシスト期待値(xA):xA(Expected Assists)は、パスがアシストにつながる確率を表す。例えば、マンチェスター・シティ退団を発表したベルギー代表MFケビン・デ・ブライネのような選手は、質の高いパスでxAが高く、チャンスメーク能力を定量化できる。『Opta』のxAモデルは、全てのパスに対してアシスト確率を算出し、従来の「アシスト数」より詳細な評価を可能にする。