特定の金属を極低温まで冷やすと電気抵抗がゼロになる超伝導では、クーパー対と呼ばれる電子のペアが形成されることが知られています。
普段は反発し合う電子同士が格子振動(フォノン)を介して引き合い、ペアになる現象です。
その結果電子は集団的な凝縮状態に入り、エネルギー的に安定したギャップを持ちます。
リャン氏とコールドウェル氏はこの現象に着目しました。
コールドウェル教授は「私たちは、ある種の相互作用がエネルギーをこれほど急激に低下させることができるのか、その手がかりを超伝導に求めました。クーパー対の存在は、そのようなメカニズムが現実に存在することを証明しています」と語っています。
つまり初期宇宙においても、電子のクーパー対形成に似た自己相互作用によって質量ゼロの粒子がペアを組み、エネルギー状態が劇変して質量を帯びたのではないかというわけです。
実際、彼らのモデルは南部陽一郎・ジョナ・ラシニオ(Nambu–Jona-Lasinio, NJL)モデルと呼ばれる素粒子論の枠組みに基づいており、これはもともと超伝導のBCS理論にならって質量の起源を説明するために考案された理論です。
既知の物理法則に基づくシンプルなモデルで無理なく暗黒物質の形成過程を描き出した点は、この理論の大きな魅力と言えるでしょう。
光速粒子が氷になった日

提案された「凝縮する暗黒物質」理論は、そのユニークさと説得力から注目を集めています。
この理論は突拍子もない思いつきではなく、現代物理学の知見に裏打ちされたシンプルで直感的な解決策です。
研究の第一著者であるリャン氏は「私たちの理論の数学モデルは多くの要素を組み込む必要がないため本当に美しいものです。
それは既に知られている概念と宇宙のタイムラインに基づいています」と強調しています。