スピンが互いに反対向きだったために引き合ったのであり、イメージ的には磁石のN極とS極が引き合うようなものになります。
(※より詳しくは、実際には「軸性化学ポテンシャル」という効果などがはたらき、同じような運動状態をもつ粒子同士がクーパー対(ペア)を作ることで安定化します。)
こうして粒子と反粒子のペア(クーパー対類似の状態)の凝縮という相転移が起きると、粒子たちは次第にスピードを落として運動しなくなり、圧力もほとんどゼロの冷たい状態へと近づいていきました。
言ってみれば、初期宇宙の激しいダンスパーティーで熱狂的に動き回っていた粒子たちが、ペアになった途端に一斉にクールダウンして床に沈んでいったようなものです。
その結果残されたのは、重く非相対論的になった粒子の凝縮体です。
これは現在の宇宙で銀河に質量を与えている暗黒物質そのものに他なりません。
この相転移は宇宙論におけるフリーズアウト(凍結)にも似た役割を果たします。
(※通常の熱的アニヒレーションによるフリーズアウトとは異なるものの、温度低下と相互作用の変化によって暗黒物質の最終的な数が決まるという点で“フリーズアウト的”な役割を果たします。)
つまり、粒子が熱いプラズマから離脱し、その供給が断たれることで最終的な残存数、すなわち遺物としての暗黒物質の量が決定されたのです。
重要なのは、このモデルで生成された暗黒物質は従来のシナリオよりわずかに速いペースで減衰・希薄化していくという特徴を持つことです。
平たく言えば、現在の宇宙で測定される暗黒物質の分布やゆらぎに微妙な違いが現れる可能性があるということです。
このわずかなずれこそが、本理論ならではの指紋として宇宙の観測に刻まれているかもしれません。
ところで、一見奇抜にも思えるこの質量獲得メカニズムには、身近な物理現象との深い類似が隠されています。
研究チームがヒントを得たのは他でもない超伝導です。