コールドウェル教授は「ダークマターはその始まりにおいて、ほとんど光のような、質量がほぼゼロの相対論的な粒子だったものの、時間経過とともに質量を持つ存在に変わっていった」と述べています。
なぜ暗黒物質は光のような粒子から質量を持った存在になったのでしょうか?
新理論では「暗黒物質=凍りついた光速粒子」になる

理論モデルの舞台は、ビッグバン直後の灼熱の宇宙です。
宇宙誕生まもない頃、空間は超高温・超高密度のエネルギーの海でした。
光の粒である光子と同様に、質量を持たない(あるいは極めて軽い)粒子たちが光速に近いスピードで飛び交っていたと考えられます。
リャン氏とコールドウェル氏は、このカオスのような初期宇宙で暗黒物質の元となる粒子もまた「熱く、速い」状態にあったと仮定しました。
やがて宇宙が膨張して温度が下がると、これらの粒子同士の間に特定の自己相互作用が働き始めます。
研究チームによれば、この相互作用によって粒子たちはペアを組み、まるで水蒸気が急激に冷やされて水滴へと凝縮するようにエネルギーを失って大きな質量を獲得したといいます。
実際、粒子同士がペアを形成するときにエネルギーのギャップが開き、彼らはまさに「エネルギーの崖から滑り落ちる」ように一気にエネルギーを奪われてしまいます。
リャン氏は「私たちの数学モデルで最も予想外だったのは、高密度のエネルギー状態と塊状の低エネルギー状態を橋渡しするエネルギーの急低下でした」と、この劇的な“エネルギーの急降下”に驚きを示しています。
言い換えれば、質量がゼロの状態から有る状態へ粒子が相転移した転換点であり、この瞬間に暗黒物質は自らの冷たく重い性質を手に入れたのかもしれません。
では、なぜ粒子同士がペアを作り引き寄せ合ったのでしょうか。
研究チームはその理由を粒子のスピン(自転)の向きに求めています。