さらに、この研究は職業そのものの特性にも注目しています。

データを詳しく分析した結果、満足度の高い職業では「人と接する」「創造的である」「主体的に判断できる」などの傾向が強い一方、満足度の低い職業では「ルーチン的」「身体的に負荷が大きい」「他者から指示された作業が中心」といった特徴が浮かび上がりました。

これは心理学で言うワークバリュー(仕事で重視する価値観)や職務特性の違いが満足度に影響することを示唆しています。

例えば単調でも安定した仕事を好む人もいれば、多少不安定でも裁量の大きい仕事に充実を感じる人もいます。

本研究では裁量や自己決定が大きい仕事の満足度が高い傾向が見られましたが、理想の仕事像は個々人で異なるでしょう。

自分の性格や価値観に合った職業に就くことが、その人にとって最大の幸福をもたらすと考えられます。

最後に、この研究結果は社会全体への示唆も含んでいます。

仕事満足度の低い職種として挙がった現場労働やサービス業は、社会に不可欠な仕事であるにもかかわらず従事者の幸福度が低いという問題を浮き彫りにしました。

今後、これらの職種では働きがいを向上させる施策(仕事内容に裁量やスキル活用の余地を増やす、人間関係のストレスを減らす工夫、待遇改善など)が求められるでしょう。

逆に言えば、仕事環境や内容の工夫次第で従業員の幸福度を高める可能性があります。

本研究は職業ごとの満足度傾向を明らかにしましたが、低い傾向にある職種でも職場環境を見直すことでやりがいを感じられる場に変えていくことが社会の課題と言えそうです。

なお、本研究はエストニア国内のデータに基づいており、文化的背景によって職業イメージや満足度が異なる可能性があります。

研究チームも「エストニアで見られたパターンが他国でもそのまま当てはまるとは限りません」と注意を促しています。

例えば宗教関係者の高い満足度は宗教が盛んな国ほど顕著かもしれませんし、医師という職業の社会的評価も国によって違うでしょう。