仕事そのものの満足度が低い職種ではやはり人生全般にも不満を感じやすい傾向がありますが、化学エンジニアのように仕事満足度は平均的でも人生全体の満足度が低めという例もあり、仕事以外の要因も含めた複合的な検討が必要と言えます。
収入と満足度の相関は薄い

この研究から、「仕事選び」と「幸福度」に関していくつかの重要な示唆が得られます。
第一に、仕事に対する満足感を左右するのは必ずしも給与や社会的地位ではないということです。
実際、統計分析では収入と仕事満足度の相関はわずかで、社会的な「仕事の格」と満足度の関連も非常に弱いことが示されました。
研究を率いたアンニ氏(タルトゥ大学)は「仕事の社会的地位が満足度に大きく影響すると思っていましたが、実際はごくわずかな相関しかありませんでした。達成感の高い仕事ほど満足度が高く、たとえ地位が低くても非常にやりがいのある仕事はあり得ます」とコメントしています。
つまり、仕事に幸福を見出すかどうかは「その仕事を通じて得られる目的意識や自己決定感」に大きく依存しており、お金や肩書きは補助的な要因に過ぎない可能性があります。
第二に、自営業やフリーランスといった働き方の利点も浮き彫りになりました。
調査では自営業者は勤め人よりも仕事満足度が高い傾向が見られましたが、その背景には「独立性」や「時間の融通」といった要素があると研究者は分析しています。
上司の指示に縛られず自分の裁量で働けることが、満足感につながりやすいのでしょう。
ただし、自営業には収入の不安定さや社会的保障の少なさも伴うため、一概に全員に勧められるわけではありません。
重要なのは、自分がどのような働き方でストレスを感じにくいかを知ることであり、キャリア選択時には「自分に合った職務環境かどうか」という視点が幸福度の向上にとって欠かせないといえます。