木材建築の巨匠というブランド力と、木材活用という強いニーズが、冒頭の「富岡市役所」のような問題を見過ごし、助長させた、ともいえる。

昨年問題となった「那珂川町馬頭広重美術館」を施工したのは「大林組」である。日本を代表する総合建設会社ですら、木材劣化の可能性を指摘できなかった。

「富岡市役所」の説明会では、地元議員が懸念を示していた。にもかかわらず、検証することはなかった。

むき出しの木では雨風にさらされれば、すぐに劣化してしまうと思えましたので、大丈夫なのか確認したような次第ですが、建築の素人の私とすれば、世界的な建築家の事務所職員の方から、『大丈夫です』と言われれば、それを信じるしかありませんでした。でも、今になってみれば、やはり無理があったのかな、という印象です。

富岡市議会議員 茂原正秀(もはらまさひで)ウェブサイト

外部から進言できないのであれば、内部に進言できる部署を創設してはどうか。

「日経アーキテクチュア」によれば、隈研吾事務所は、CG、模型、インテリア、ファブリック(布・生地)などの専門チームを擁しているという。これを機に「木」の専門部署を創設してはいかがだろうか。今回のような不手際を防ぎ、信用度の回復も測れる。「広報」面の強化にもつながるだろう。

富岡市役所は100年持ち堪えられるか

富岡市役所の外装のルーバーの木は、市有林から伐採してきた「ヒノキ・マツ・クリ・ミズキ・ホオ」の5種類の木が使われている。幸い、ルーバーに発生したカビは清掃で除去できるという(軒裏の「さび・はがれ」については、経過観察後、全体修繕工事を実施予定)。

地元産木材を活用した建築物が、早々に劣化してしまうのは悲しい。しっかりと補修し、100年持たせるべくメンテナンスを続けていただきたい。

左 隈研吾建築都市設計事務所ウェブサイト、右 富岡市役所パンフレットより

【脚注】

※1 木材利用促進法: 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(2010年制定時)、脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(2021年)