何回か台湾調査に出かけて、中国語に触れる機会が増えたために、漢字への関心も深まった。たとえば台湾ではボランティア活動を「義工」あるいは「志工」と表現することを知った。これは台北市でのインタビュー調査で学んだ言葉であった。
そこから日本語になって久しいボランティア活動を「義捐・微助人活動」(ギエン・ビスケット活動)と表現するようになった。その理由は、災害時に多くの国民が提供する「気持ち」の象徴である「義援金」という表記では、意味が十分に伝わらないのではないかという疑問をもったからである。なぜなら、「義援」の「援」は慈善や被災者救済の趣旨で単に「援助する」以上の意味が感じ取れないからである。
見返りを求めないのが義捐
さらに当時、「義援金」を出したからには、「自分も困った際には義援金をもらえる」というようなNPOが出てきたので、そのような考え方ではボランティアの趣旨に合わないと思うようになった。すなわち、「義援」では単に与えるのだから、「見返り」を求める人が出ることへの危惧から、その表現では本来の趣旨にそぐわないと考えたのである。
今でもマスコミを筆頭に「義援金」という表現しか使われないが、本来は「見返りを求めない」のであれば、「義捐金」の方が正しいであろう。
その根拠としては、たとえば『大言海』では、義捐を「不幸ノ者ヲ恤ミテ、金銭、物品ヲ施シ、與フルコト。ホドコシ」とあったからである。また『広辞苑』でも、「捐はすてる意。慈善・公益・災害救助などのために金品を寄付すること。『義援』とも書く」となっている。
ボランティア切符制への疑問
これらを確認した後、ボランティア活動を「義捐・微助人活動」と表現することにした。ボランティア切符制やボランティア時間の蓄積を高唱するいくつかのNPOの活動は、たとえば3時間のボランティア活動をしたら、その時間を蓄積していて、自分が被災したような場合には、その3時間分のボランティア活動を受ける「権利」があるという趣旨で行われていた。