しかし、これでは「義捐」の精神は消えてしまう。元来は「ほどこし」であり、「捨てる」意味なのだから、「権利と義務」の観点でボランティア活動を論じることはできない。その観点からの真逆の主張である「義捐・微助人活動」の提唱であった。
微助人活動
また、「微助人活動」を「ビ・スケット活動」と呼んだのは、当時の「市民参加」論の一部に、ボランティア活動を全国的に展開すれば、「政治や世の中が変えられる」というような主張が聞こえてきたからである。「世の中が変えられる」とは大変なことであり、専門家抜きの素人集団の活動だけでは何も変わらないだろうと考えたからである。
「義捐・微助人活動」は学界レベルでは浸透しなかったが、福祉系のNPOのいくつかでは「札幌微助人クラブ」などの名称で利用されたが、10年くらい続いて自然消滅したようであった。
台北調査その後
94年と96年に松下国際財団から研究助成をいただいたので、台北市で戸別訪問をして、不十分ながらインタビュー調査を繰り返していた。内政部がまとめた『國民生活状況調査報告』(1994)によれば、台湾全体の家族構成は図3のようであった。
①単身、②夫婦二人、③単身家庭(父または母+未婚子女)、④核心家庭(父+母+未婚子女)、⑤主幹家庭(祖父母+父母+未婚子女)、⑥祖孫両代、⑦その他に分けられた家族構成であった。

図3 台湾地区受訪者家庭組織形態比較(出典)金子、1997:214.
図3から、台湾の「核心家庭」率は92年と94年ともに過半数を占めていたが、対照的に95年の日本の「核家族率」は37%あまりであった。また台湾の第2位には20%程度で「主幹家庭」が登場したが、95年国勢調査では日本の「三世代同居率」は33.3%であったから、同じ東アジア文化圏であっても、台湾の方が祖父母との別居が進んでいると見られた。
しかし、内政部の『老人状況調査報告』を入手して精読すると、図4のような結果がたくさん示されていて、台湾の男女間の家族の居住形態では統計学的な相違が確認できた。すなわち、「子と同居」に関しては女性の方が男性よりも10%近く多く出た。

図4 台湾男女高齢者の家族居住形態(出典)金子、1997:236.