つまり感染ニートアリはキツツキにとっての「極上のエサ」の要件を完璧に満たしています。
アリとしては準不老とも言える寿命を得て女王を超える超VIP待遇を受けてきた感染ニートアリの最後の役目は襲撃者に「食べられること」だったのです。
子供向けのおとぎ話にするにはブラックジョークが効き過ぎた結末と言えるかもしれません。
研究者の何人かは寄生虫とアリの関係を「悪魔との契約みたいだ」と感想を述べています。

しかし主人公「感染ニートアリ」が食べられた以降も話しは続きます。
感染ニートアリの死後、アリの体内にいた寄生虫はキツツキの体に入り込んで大人になり、寄生虫の卵をキツツキの糞にまぜて放出するようになります。
そして、アリたちはその糞を集めて幼虫に食べさせ、新たな感染ニートアリを作り出します。
感染ニートアリが如何にして誕生し、いかにして最後の役目を果たすかを調べた研究は2021年に『Royal Society Open Science』に発表され、大きな反響をうみました。
しかしこのときは寄生虫「A.brevis」が感染したアリにもたらす変化が確認されただけで、いったいどんな仕組みで寄生虫がアリを長寿化・ニート化・VIP化させていたかは不明のままでした。
そこで今回ヨハネス・グーテンベルク大学の研究者たちは感染ニートアリ生成の謎の解明に挑むことになりました。
寄生虫「A.brevis」はいったいどんな魔法を使ってアリの精神と体をあやつったのでしょうか?
寄生虫が感染アリを長寿でVIPにする方法

いかにして寄生虫「A.brevis」はアリを長寿化・ニート化・VIP化したのか?