働きアリたちに長生きしたいとおもう欲求や働き甲斐を求める心があるかどうかは不明です。
しかし長寿とVIP待遇をもたらしてくれる寄生虫「A.brevis」は個体レベルで恩恵につながるのは間違いありません。
キツツキの襲撃によって命を落とすとしても、周りの働きアリに比べて遥かに恵まれた一生であったと言えるでしょう。
ただ感染ニートアリの存在は、コロニー全体にとって間違いなく負担となります。
感染ニートアリは「働かず食べる準不老の穀潰し」であるだけでなく、女王よりも優先してVIP待遇を受けるため、女王のケアが疎かになりえます。
また感染ニートアリの存在には、コロニーの攻撃性を抑える効果があることが示されています。
余計な負担を抱え込んだせいか、寄生虫による制御が他の働きアリに及んだかは現時点では明らかではありません。
ですが攻撃性の減少は襲撃してきたキツツキを追い返す力を失わせることになるでしょう。
また正常な攻撃性の欠如は縄張り争いに不戦敗をもたらし、社会全体にとって損にもなります。
しかし寄生虫にとっては感染ニートアリを効率よくキツツキに食べさせることが全てであり、コロニーの繁栄はどうでもいいようです。
研究者たちは今後、発見された未知のタンパク質の機能を調べ、感染ニートアリに変化を及ぼす仕組みを1つずつ調べていくとのこと。
個体から搾取する従来型の寄生虫とは違い、寄生虫「A.brevis」は社会全体から搾取する極めて洗練された戦略を進化させました。
寄生虫から宿主の細胞に働きかける種を超えた細胞間制御が実現すれば、虫たちの高度な社会を人為的に操作できるようになるかもしれません。
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参考文献
There’s a Parasite That Triples Ants’ Lifespans… And It Actually Sounds Pretty Great
https://www.sciencealert.com/theres-a-parasite-that-triples-ants-lifespans-and-it-actually-sounds-pretty-great