このときキツツキの糞と一緒に寄生虫の卵がアリ幼虫の体内に入り込み、後の感染ニートアリとなります。

寄生虫「A.brevis」にとってアリは中間宿主に過ぎず、大人になって卵を産むのは最終宿主であるキツツキの体内に入って以降です。

つまり寄生虫「A.brevis」は「キツツキ」➔「キツツキの糞」➔「アリ」➔「キツツキ」というサイクルを繰り返し、生活していると言えるでしょう。

寄生虫「A.brevis」は「キツツキ」➔「キツツキの糞」➔「アリ」➔「キツツキ」というサイクルを繰り返し、生活している
寄生虫「A.brevis」は「キツツキ」➔「キツツキの糞」➔「アリ」➔「キツツキ」というサイクルを繰り返し、生活している / Credit: Juliane Hartke et al . Long live the host! Proteomic analysis reveals possible strategies for parasitic manipulation of its social host . bioRxiv (2023)

このサイクルを完了するには感染ニートアリがキツツキに食べられる必要があります。

もしキツツキの襲撃がなければ、感染ニートアリは長い寿命をずっと楽しめるでしょう。

しかし自然界はそう都合よくありません。

永遠に続くと思われ得た感染ニートアリの優雅な生活も、ついに終わる時が来ました。

感染ニートアリが属するアリ(T.nylanderi)たちは通常、木の幹や枝、どんぐりの中を巣にしているのですが、このような住処は天敵となるキツツキからの襲撃を受けやすい場所でもあります。

キツツキの襲撃を受けるとアリたちの住処である木が破壊され、容赦なく捕食されていきます。

このとき長寿を誇る感染ニートアリは、その特性全てが仇になります。

キツツキの襲撃が数年おきのレアイベントであっても、長生きの感染ニートアリはキツツキの襲撃に遭遇する確率が格段に高くなります。

そして「まるで狙ったかのように」感染ニートアリの体はキツツキにみつかりやすい薄色で、若々しく太っており、キツツキが食べやすいように外骨格が柔らかく、長年の引き籠り生活ゆえに満足に逃げれません。