しかしクシイモリの場合、何世代が経過しても組み替えによる第1染色体の修理イベントは起こりませんでした。

なぜクシイモリの第1染色体では組み換えが起こらないのでしょうか?

欲張りな「超遺伝子」の存在が組み換えを妨害していた

欲張りな「超遺伝子」の存在が組み換えを妨害していた
欲張りな「超遺伝子」の存在が組み換えを妨害していた / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

なぜクシイモリの第1染色体では組み換えが起こらないのか?

その理由は「超遺伝子」という幾つもの遺伝子がセットになって遺伝する仕組みにありました。

超遺伝子に内包される複数の遺伝子はレストランのコース料理やハンバーガー屋のセットメニューのようにグループ化されており、まとまって1つの遺伝子のように動きます。

重用な遺伝子を超遺伝子としてまとめることは生存にとって大きな利点になります。

発見当初こそ超遺伝子は珍しい存在でしたが、現在では動物植物を問わず複数の種に存在することが明らかになっています。

また超遺伝子がまとまって動くのは、染色体の一部に大規模な順序の逆転が起こっているからであることがわかってきました。

染色体同士の間で組み換えが起こるには、切り離された部位が相手に接着できるように、両方の染色体のDNA配列が同じでなければなりません。

しかし逆位が起きて染色体の一部に大規模なDNAの違いがうまれると、その部分では正常な組み換えが不可能になってしまいます。

たとえるならば、超遺伝子はジッパーの一部が逆向きにつけて、わざと相手とかみ合わなくしている状態とも言えるでしょう。

これはセット内容を維持するための、一種のチートに近いものです。

しかしチートには副作用が伴います。

超遺伝子は組み換えを防ぎ遺伝子セットを保存できますが、ランダムに発生する変異までは防げません。

ランダムに発生する変異は組み換えによって修正することが可能ですが、超遺伝子は組み換えをできなくしているため、発生した変異を治す手段が縛られてしまいます。