「無駄な卵」を産むクシイモリの謎に、科学の最新研究が光を当てます。
毎年、クシイモリは何百もの卵を産みますが、その半数が孵化せず、その理由は長い間未解明でした。
しかしオランダのライデン大学(LEI)で2022年に行われた研究では、その原因が「超遺伝子」の存在と、それがもたらす恩恵と代償による可能性が示されました。
超遺伝子は獲得した生命に短期的な利益を与えてくれますが、時に修正不可能な長期の不利益という恐ろしい結果をもたらしていたのです。
クシイモリと超遺伝子との間に、いったいどんな悪魔的契約が結ばれていたのでしょうか?
研究内容の詳細は2022年6月13日付けで科学誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences』にて公開されています。
目次
- なぜクシイモリは孵化しない卵を産むのか?
- クシイモリの卵の半分が死んでしまう理由
- 欲張りな「超遺伝子」の存在が組み換えを妨害していた
なぜクシイモリは孵化しない卵を産むのか?

クシイモリの繁殖は非常に不合理です。
毎年、繁殖期が終わると、メスは数百個の卵を産み、そのひとつひとつを池の水草の葉にくくりつけ、安全に孵化する機会を増やします。
しかしメスの産んだ卵の半分は、決して孵化することはありません。
自然界の生存競争は激しく、同じ条件にある種ならば、より多くの卵を産んだものが子孫を残せます。
たとえばウミガメの場合、卵から大人になれる確率はわずか1000分の1くらいと言われています。(※過去には5000分の1や1万分の1とも言われていました)
クシイモリの持つ産んだ卵の半分が死ぬという特性は控えめに言っても極めて生存に不利であり、そのような不利な性質は通常、進化の過程で修正されます。