アインスタイニウムは核実験や高性能原子炉の中でごく少量だけ生成されるもので、「人類が何とか扱える限界に近いほど重い元素」と言われています。
そのアインスタイニウムにヘリウム粒子を衝突させると、101番元素メンデレビウム(Md)が合成できますが、このような重い元素は半減期が短く放射能も強いため、研究用のサンプルを準備するだけでも非常に困難です。
しかし、こうした極限状況を調べる意義はとても大きいです。
核分裂の仕組みがどう変化するかを正確に突き止めれば、「超重元素はどこまで存在しうるのか」「星のなかでどうやって金やウランのような重い元素がつくられるのか」という壮大な疑問に迫る手がかりになるからです。
実際、天体内の核反応では巨大なエネルギーと膨大な中性子の供給があり、高原子番号や中性子過剰の核種が生成されやすいと考えられています。
そこでの核分裂パターンがわかれば、なぜ宇宙にはこんなにも重い元素が存在するのか、あるいは周期表の先へどこまで新元素が続くのか、さらに明らかになるかもしれません。
そこで今回研究者たちは、最重量級のアインスタイニウム(254Es)を標的にヘリウム粒子を高速で衝突させ、メンデレビウム(258Md)を合成して核分裂の詳細を初めて大規模に測定するという大胆なアプローチを取りました。
こうして質量257の境界を超えた未知の核分裂領域に迫ることで、“常識を覆す”現象が次々に見えてきたのです。
「人類が利用できる最も重い元素」が開いた未知の割れ目

アインスタイニウム(Einsteinium, 元素番号99)は、現代物理学の巨匠アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)にちなんで名づけられた超ウラン元素の一つです。