地下洞窟探査への期待と現実
科学者たちは、数十億年前の火星はもっと地球に似た環境だったと考えている。しかし、現在の火星は強固な磁場や厚い大気を失っており、地表は生命にとって致命的な高レベルの宇宙線や太陽放射線に絶えず晒されている。そのため、もし生命が存在する(あるいは存在した)としたら、その痕跡は地下に求めるのが最も現実的だ。地下洞窟や、かつての火山活動でできた溶岩洞(溶岩チューブ)は、過酷な放射線から生命を守る天然のシェルターとなり得る。ここに生命体の証拠や化石が見つかるかもしれないのだ。
この期待から、アメリカの地下構造や地震活動の専門機関であるUSGS(アメリカ地質調査所)も火星の洞窟探査に協力してきた。2019年には、USGS宇宙地質科学センターが、火星表面に点在する1000箇所以上の洞窟入口候補地を示した驚くべき地図を発表している。

(画像=画像は「Daily Mail Online」より,『TOCANA』より 引用)
しかし、これらのデータは火星上空約400kmを周回する探査機から得られたものであり、「それらが地表下でどれほどの広がりを持っているかを見ることは不可能です」と、USGSの宇宙科学者グレン・クッシング氏は指摘する。深さや広がりが分からないため、あくまで「候補地」であると慎重な姿勢を示していた。
しかし、今回公開された写真は、少なくとも一つの穴が未知の地下層へと明確に続いていることを示唆しており、地下探査への期待を再び高めるものとなった。「これらの穴は、将来の宇宙船、ロボット、そして人類による惑星間探査の主要なターゲットとなるでしょう」とNASAは付け加えている。