両氏が最大の問題として取り上げたのが、EPAが依拠する気候モデル(特にCMIP5モデル)の信頼性である。過去40年の実測気温と気候モデルの予測を比較した図(図1)を提示し、モデルの予測が現実と大きく乖離していることを証明した。

図1 気候モデルによるシミュレーション結果と観測結果の乖離

この図には、32の研究機関による102のシミュレーション結果(破線)と、観測された気温変化(実線)が示されている。注目すべきは、モデルの平均値(赤線)が観測値の2〜3倍も高い温暖化を予測していた点である。

さらに、唯一実測と一致していたロシアのモデル(INM-CM)は、IPCCの主要報告書で意図的に排除されていたことも明らかになっている。

従って、観測と一致しないモデルに基づいたEPAの主張、それに基づく規制などは“科学的に正当化されない”ということになりはしないか。

また、W. Happer、R. Lindzen両氏の「科学理論は観測と照合し、予測が外れれば退けられるべき」という基本原則を適用すれば、ロシアのモデルは“選択”、その他のモデルはすべて“ボツ”だということにもなる。

4. 政策・報道への誤用リスク

モデルの出力結果が科学的事実であるかのように扱われ、次のような構造的誤用が生じている:

「2100年に4℃上昇」といった極端な数値を元にした恐怖喚起 経済・産業・生活への過剰な規制と税金投入 CO₂のみを唯一の温暖化原因とする“単因論”的政策 科学的異論を封じる「モデル至上主義」

これらは、モデルの前提や限界に対する正しい理解なしに、社会や政策が“シミュレーション結果”に振り回されている典型例である。こうした結果を疑う事もなく、「CO₂は厄介者だから減らしてしまえ」という安易な発想では、我が国の産業や経済、そして社会をダメにしてしまう。

5. 「モデル=現実」ではない

モデルはあくまで仮定と計算に基づいた“予測”にすぎない。それが科学的知見に基づいて構築されているとはいえ、観測結果に照らして妥当性を常に検証し、限界や不確実性をオープンに示すことが求められる。