気候変動に対する太陽活動の影響は、紫外線の変動、宇宙線を介した雲形成(スベンスマルク仮説※2))なども含めて多面的であるが、それらはモデルに十分に組み込まれていない。その結果、20世紀後半の温暖化がCO₂に過剰帰属され、自然要因の寄与が過小評価されている。

※1)マウンダー極小期:1645年から1715年にかけて太陽黒点の観測数が著しく減少し、太陽時期活動が弱まった期間 ※2)スベンスマルク仮説:宇宙空間から飛来する銀河宇宙線が地球の雲の形成を誘起しているという仮説

(4) 雲・水蒸気のフィードバック処理

気候モデルにおける最大の不確実要素の一つが、雲と水蒸気の取り扱いである。これらは気温変化に大きな影響を与えるが、その物理過程が複雑すぎて正確にモデル化できないため、「パラメータ化」に依存しており、結果を大きく左右する。

(5) モデルのチューニング(調整)

多くのGCMは、過去の観測データに「合うように」パラメータを調整することで整合性を取っている。これはいわば「結果合わせ」であり、未来予測の信頼性を高めるものではない。

(6) 実際の観測との乖離

衛星観測による気温上昇は、モデルが予測するほど急激ではないことが知られている(例:熱帯中層大気の温度変化)。つまり、モデルは一貫して温暖化を“過大評価”してきた傾向がある。

3. シミュレーション結果と観測結果の乖離

米国のW. Happer(プリンストン大学物理学名誉教授)とR. Lindzen(MIT大気科学名誉教授)は広範なデータを引用しながら、米国環境保護庁(EPA)の気候政策を批判、地球は気候危機にないとの書簡をEPAに送った(両氏からは翻訳・転載の了解をいただいた)。

Happer-Lindzen-EPA-Power-Plants-2023-07-19

両氏が強調するのは、「科学理論は観測と照合し、予測が外れれば退けられるべき」という基本原則である。気候モデルやコンセンサス、政府の意見、査読といった形式的な手順ではなく、「現実に即した実証性」が科学の要だというのである。