こうした状況で注目を集めたのが、今回の研究です。

研究者たちは、高所得国で確立されつつある「百害あって一利なし」という知見が、異なる文化・経済圏にも当てはまるのかを徹底検証するため、世界各地で行われた関連研究を網羅的に分析しました。

とりわけ低・中所得国では、しつけ方法や家庭環境、子どもを取り巻く社会制度などが高所得国と大きく異なります。

それゆえに、同じような結論が得られるのか、それとも新たな発見があるのかは、専門家の間でも長らく“解明されていない謎”として関心を集めてきたのです。

そこで今回研究者たちは、世界中の関連研究を膨大に集め、メタ分析や多角的な調査手法を駆使して、体罰が子どもたちの長期的発達に与える影響を詳細に探ることにしました。

次のセクションでは、具体的にどのように調査が行われ、どのような結果が得られたのかを見ていきましょう。

体罰0勝16敗の衝撃データ

体罰0勝16敗の衝撃データ
体罰0勝16敗の衝撃データ / Credit:Canva

この研究では、まず世界各地に点在する低・中所得国(LMICs)の研究データを徹底的に収集しました。

対象となった国は90を超え、そこで行われた関連論文や調査報告、およそ200近いデータ群をまとめて分析しています。

研究者たちは、「体罰を経験した子どもたちの学習面・心理面・社会的行動などがどのように変化するのか」を一つひとつ確認するため、総合的な“メタ分析”という手法を使いました。

これは、さまざまな研究結果を集めて統計的に整理し、全体としてどのような傾向があるのかを探る方法です。

具体的には「親子関係の良し悪し」「学業成績」「うつや不安などの精神的健康」「将来の暴力行為や被害のリスク」「物質乱用の可能性」など、合計で19種類の指標が取り上げられました。

その結果、体罰が行われた子どもたちはなんと16項目で明らかにマイナスの影響を受けていることがわかったのです。