一方で、「生きている」状態そのものと光の関係は十分に調べられていませんでした。

生物の発する光は“生きている証”なのか?

もしそうであれば、生命活動が停止した際に光もほぼ消えてしまうはずです。

今回紹介する研究チームはこの点に着目し、生きた動物と死んだ動物で生物発光がどう変化するかを、世界で初めてマウス全身レベルの撮影によって検証しました。

命が消えると光もほとんど消えてしまう

命が消えると光もほとんど消えてしまう
命が消えると光もほとんど消えてしまう / 図1:(A)生きているマウス(上段)4匹と、薬剤投与によって死亡したマウス(下段)4匹の超弱発光イメージ。 各マウスから放出される光子数に応じて疑似カラーで示しており、暖色(黄~赤)ほど発光強度が高いことを意味します。 一目でわかるように、生存中のマウスは体全体から緑~黄色の光を発しているが、死亡後のマウスでは発光が大幅に減少しました。 (B)4匹のマウスについて、生存時と死亡後で全身から検出された総光子数(単位:photons/sec)を比較した棒グラフ。 死亡後は生存時に比べて光の総量が著しく減少しており、まさに生命活動が停止するとともに光も途絶えることを示唆しています。/Credit:V. Salari et al . The Journal of Physical Chemistry Letters (2025)

研究では毛のない実験用マウス(SKH1 Elite系)4匹を用い、特殊な暗室内で超高感度CCDカメラによりマウスが放つ光を撮影しました。

まずマウスを30分間暗闇に慣らした後、生きている状態で全身からの微弱な光を60分かけて撮影します。

その後、マウスを安楽死処置し、呼吸や心拍が止まった直後に再び同じ条件・同じカメラ設定で60分間撮影しました。

なお撮影中はマウスの遺体を生きていたときと同じ体温(37℃)に保ち、単に体が冷えたことによる発光変化ではないことも確認しています。

この結果は、まさに「命の光」が消えることを実証したものです。