しかし、“海からウランを得る”という構想自体が決して夢物語ではないと示された今、日本が海洋資源国へと生まれ変わる可能性も十分に考えられるのです。

また、回収したウランを実際の原子炉燃料に精製・加工するプロセスも必要です。

それでも専門家は、このような低コスト・低エネルギーでウランを回収できる技術の登場に大きな意義を見出しています。

まさに「海の中に眠るウランを電気の網で掬い上げる」ような発想であり、核燃料生産のパラダイムシフトにつながる可能性があるからです。

研究チームの一人は「この装置は極めて低い電力でウランを選択的に取り出せることを示しました。将来的に海水ウラン資源の実用化に道を開く成果です」とコメントしています(要旨)。

今後さらなる実証実験やスケールアップ研究が進めば、海が人類の巨大な原子力エネルギー源へと姿を変える日が来るかもしれません。

将来、原子力発電所が海水から絞ったウランで動く日を、私たちは目にすることになるでしょう。

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元論文

Bipolar electrochemical uranium extraction from seawater with ultra-low cell voltage
https://doi.org/10.1038/s41893-025-01567-z

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部