さらに電気代については、1kgあたり約83.2ドル(日本円で約1万1千円)という試算が出されており、これは昔からある吸着法などより大幅に安価です。
具体的には、高濃度ウラン(10ppm)を溶かした模擬海水での電気代が1000倍安く、天然海水(3ppb)での電気代が25倍ほど安くなりました。
(※また総合的なコストも2.5倍から4.3倍安くなりました)
こうした成果は、海水に含まれるわずかなウランを効率よく集められる道を開いたことになり、今後の省エネとコスト削減の両面で大きな可能性が期待されています。
日本がウラン産出国になれるかもしれない

この研究成果は、海水中のウラン資源を現実的に利用する道筋をつける画期的な一歩と評価できます。
核燃料の安定供給源として海洋に目を向ければ、エネルギー安全保障と脱炭素の双方に寄与するポテンシャルがあります。
研究論文も「本研究は持続可能な資源リサイクルのための電気化学システム設計に新たな道を拓くものだ」と述べており、開発した手法がウラン以外の希少資源の回収にも応用できる可能性を示唆しています。
実際、この両極電気化学システムは、例えば工業廃水からの有害金属の除去や、使用済み製品からの貴金属回収など、さまざまな分野への展開が期待できるでしょう。
もし日本がこの技術をスケールアップし、大規模に海水からウランを“絞り取る”体制を整えられれば、世界的にも珍しい“海洋ウラン産出国”として活躍できるかもしれません。
国内の原子力発電所を動かすための燃料を、輸入ではなく自国の海から確保できるようになれば、エネルギー安全保障や貿易収支の改善にも大きく貢献するでしょう。
もちろん実際には、海の生態系や漁業への影響、装置の長期的な運用コストなど、解決すべき課題が数多く残されています。