そのためある種のパラドックスが発生し、クエーサーから発せられる光には未解明の力が加わっている可能性も論じられていました。

しかし今回の研究チームは190個のクエーサーに対する20年間の観測データを利用して、ビッグバンから10億年ちょっとしかたっていない若い宇宙に存在したクエーサーに「5倍もの時間の遅れ」が発生していることを証明したのです。

もしその頃にタイムスリップした人がいても、1秒はちゃんと1秒として認識されますが、120億年以上後の地球では当時の1秒で起こる出来事が5秒かけてスローモーションで観測されるのです。

研究者たちは「幼い宇宙では出来事がはるかにゆっくりと展開しているように見える」と感想を述べています。

また今回の観測により遠方のクエーサーからも時間の遅れが観測されたという事実は、アインシュタインの理論が遥かかなたの宇宙にも通用できることを示しています。

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参考文献

Quasar ‘clocks’ show Universe running five times slower soon after Big Bang
https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2023/07/04/quasar-clocks-show-universe-appears-five-times-slower-after-big-bang-einstein-relativity.html

元論文

Detection of the cosmological time dilation of high-redshift quasars
https://www.nature.com/articles/s41550-023-02029-2

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。