もし空間が伸びたり、自身が光速で移動することで、光の速度が遅れて見えそうになった場合、宇宙は光速を一定に保つために時間の方を歪めてしまうのです。
この事実を示したのがアインシュタインの相対性理論です。
そのため「距離=速度×時間」の式では、空間の伸びにより距離が増加した場合、それに応じて時間も増加することになるのです。
そして、この時間部分の増加こそが、過去の世界をスローモーションにみせる原因となっています。
もし発信源で光が1秒に1回発生するならば、宇宙の膨張により、光が地球に到着する頃には2秒に1回、3秒に1回と、時間部分(秒)が増えてスローモーションにみえるのです。
過去に観測された超新星爆発では、波長の伸び率がおよそ元の2倍であることが示され、超新星爆発の光が75億年ほど前に発せられたことが突き止められました。
また実際に最初の動画のように、超新星爆発の進行が直近でみられるよりもずいぶんとスローモーションになっていることも、観測によって確かめられました。
しかし、超新星爆発がいくら強い光を放つといっても、光が観測できる距離には限度があります。
つまり、より古い時代に発された光でより多くの「時間の遅れ」を観測するには、超新星爆発を超える強烈な光を放つ天体が必要になるのです。
そこで今回、シカゴ大学の研究者たちが着目したのがクエーサーでした。
クエーサーの正体は活発に物質を飲み込んでいる超大質量ブラックホールであり、たいていは活動銀河の中心に存在します。

クエーサーの周りには飲み込まれる直前の物質が光の速度に近い速さで円盤状に回転しており、円盤からは激しい光が発せられています。
このようなクエーサーが発生させる莫大な光は超新星爆発よりも長距離に届けられます。
ただこれまでの研究ではクエーサーから発せられる光を観測しても、超新星爆発のような時間の遅れを十分に検知することはできませんでした。