さらにその後は新規打ち上げが続けられているにもかかわらず、生きている衛星数は急速に減少していきました。
そしておよそ40~50年後になるとデブリの上昇率はほぼ90度に達します。
これは全ての衛星が破壊され、新たに衛星を打ち上げても直後にデブリによって破壊されてしまう状況を意味します。
こうなると、新たな衛星打ち上げは軌道にデブリを追加するだけの行為になってしまいます。
そして人類は宇宙に至る道を完全に塞がれ、GPSも衛星通信も宇宙望遠鏡も、衛星技術を利用していた全ての技術は、ある種のロストテクノロジーとなります。
(※今回の研究では1cm以上のデブリが調査対象になりましたが、現実の地球軌道にあるデブリは小さいものほど数が大きく、大きさ1mm以上のデブリの総数は1億3100万個に及ぶと考えられます)

このような勝者のいない結果について研究者たちは、核戦争における相互確証破壊と類似するものだと述べています。
相互確証破壊は核の打ち合いによって双方が確実に破滅することを意味する言葉であり、それゆえに人類は核戦争を起こせないとの結論に至ります。
同様に、たった250個の衛星が破壊されるだけで地球軌道が完全に塞がってしまうという状況は、宇宙戦争を行う当事国に対衛星兵器の使用をためらわせることになります。
ただ現状、大国同士が戦争を行った場合「敵国の衛星を放置する」という選択肢は絶無です。
衛星は精密誘導兵器やドローン、通信まであらゆる軍事技術の基礎となっており、敵国の衛星を破壊できた側と破壊できなかった側では、その結果がそのまま戦争の勝ち負けを決めてしまいます。
宇宙開発が進めば、小国同士の戦争ですら、開戦第一撃で敵国の衛星を全て破壊するというのが常識になるでしょう。