ミサイルの精密誘導、無人兵器やドローンの操縦、さらにあらゆる情報通信システムにとって衛星の存在は必要不可欠です。

近年になって米国やロシア、中国で宇宙軍の創設されたという報告があるのも、自国の衛星を守り敵国の衛星を破壊することが、戦争に勝つ最短ルートになっているからです。

軌道上の物体数は急速に増加している
軌道上の物体数は急速に増加している / Credit:Anelí Bongers and José L. Torres . Star Wars: Anti-Satellite Weapons and Orbital Debris . Defence and Peace Economics (2023)

一方で、宇宙空間の軍事化と兵器化は軌道上のゴミの増加と密接に関係しており、衛星や宇宙ステーションの安全性を脅かしています。

そこで今回、研究者たちは宇宙における戦争が軌道の安全性と衛星に与える影響について、精緻なシミュレーションを行うことにしました。

調査にあたっては2つの現実的なシナリオがシミュレートされました。

1つ目は単一の対衛星兵器が試験的に発射された場合の影響。

2つ目は大国間の戦争により、双方の衛星の10%が破壊された場合の影響です。

またシミュレーションではNASAの標準破壊モデルが利用されました。

この標準破壊モデルは既存の観測結果や実験室での測定結果をもとに作成されており、10cm以上の大きなデブリが1個できるとき、1~10cmの間の小さなデブリが50個できるとされています。

より具体的には10トンの衛星が1機破壊されると10cmを超えるデブリが5000~1万5000個、1~10cmのデブリが25万~75万個作成されます。

研究者たちがシミュレーションを行った結果、単一の衛星兵器のテストであっても1cmを超えるデブリが新たに10万2000個発生し、デブリの発生地点が高高度だった場合には、その悪影響が消えるのに1000年以上かかることが示されました。