当初は「緊急通報センター」としてはセコムなどの民間企業委託型、自治体直営型、消防署設置型などに分かれていたが、費用の面と119番への通報しやすさなどから次第に消防書設置型に収斂していった。

3人の「緊急協力員」を選ぶのが大変

ただし、「緊急通報センター」がどこにあっても、3人の「緊急協力員」を選ぶのが大変であり、結局は民生委員や町内会長がたくさん引き受け、残りは一人暮らし高齢者の近居する家族や親族が引き受ける状態がみられるようになった。なぜなら、いったん「緊急協力員」を引き受けると、24時間の支援体制と責任が生じてしまうからである。

このシステムで救急車が駆けつけ、5%程度の救命率が得られたが、この3人を確保することの困難性によって、最終的には119番通報でいいのではないかという雰囲気が強くなり、徐々にこのシステムへの関心も薄れていった。しかし、情報化の応用の一環として、地域福祉システムが構築できた経験は大きかったように思われる。

「何がどう変わるか」

『高齢社会・何がどう変わるか』というタイトルのうち、「何がどう変わるか」を付加したのは編集部からの案であった。そうすると、時代の主潮であった「老人問題」を越えた「変化の側面」をまとめることが必要になる。

そのため連載3回目で紹介した「役割縮小過程としての高齢者」なのだから、「役割」を一つだけでも増やすことが高齢者の新しい変化をつくりだすのではないかと考えるに至った。その見取図が図5である。

図5 生涯における役割の型がもつ相対的重要性 (出典)金子、1993:109

役割理論

これはAging研究者であるロソーによる作図であるが、「制度的役割」は子どもから中学生あたりまでは家族内に止まるが、高校や大学になると、学生としての本分に付随する「役割」以外にも、クラブ活動の世話やボランティア活動それにアルバイトなどでもいくつかの「役割」が生まれてくる。そして就職したら、勤務先だけの「役割」に止まらず、それは定年退職まで増加する傾向をもつ。