このジャーナリストがフェーザー内相に詫びを入れれば執行猶予になるとも言われているが、ジャーナリストは謝らないらしい。これに抗議をする目的で、同じような発言を試みようというジャーナリストも出始めている。どうなるか見ものである。

そんな状況なので、今回のAfDの件はおそらくこのままでは済まない。支持率が20%を超える政党に、証拠は隠したまま極右の烙印を押せば、事実上、1000万人以上の支持者をも極右にしてしまうわけだから、まさかそんな強権的なことがスムーズに行くはずはない。

旧東独の自治体では軒並みAfDが第1党だし、絶対的過半数を占めている選挙区もあるため、特に旧東独の人々の強い反発が予想される。こうなると政府は、ドイツに再び東西の壁を作ることになり、結局、国民を分断させているのは、異なる意見を受け入れようとしない社民党、CDU、CSU、緑の党、左派党の側であると言わざるを得ない。

そして、私から見ると、同じく罪深いのが主要メディアだ。公共メディアが政府の太鼓持ちであるのは今に始まった事ではないが、なぜか、その他の多くの主要メディアも、政府とスクラムを組み、民主主義を防衛すると豪語している。

そもそもメディアの役目は、国民の側に立ち、政府を監視することのはずだが、今やドイツではそれが機能していない。その反対で、政府が国民の権利を制限するのを幇助しているのだから、これではもうすぐ中国と変わらなくなる。

ただ、EUの多くの国々では、潮目はすでに変わっている。当初、ナチだと罵倒されていたイタリアのメローニ首相は、国民の支持を得て、今やEUの指導的立場に躍り出ている。また、5月1日の英国の統一地方選では、やはり極右と言われて排斥されていたファラージュ氏の「リフォームUK」が圧勝。

さらに、昨年11月のルーマニアの大統領選挙では、保守の候補者が最多票を取ったにも関わらず、ロシアが介入した不正選挙だったという理由で引き摺り下ろされたが、5月4日のやり直し選挙で、同じ政党から出た候補者が再び最多票を取った。しかも、前回より得票数が格段に伸びたと言うから、国民は政府の強硬なやり方に選挙で抗議したのである(決選投票は18日の予定)。その他、オランダ、デンマーク、スウェーデンなど、左派の政策にブレーキが掛けられた国々は少なくない。