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なぜ、公共メディアも主要メディアも沈黙を保っているのか? 憲法擁護庁という名のいわば国内向けの秘密警察が、目障りで強力な政敵であるAfDを“合法的”に片付けてしまおうとしているのに、エリートメディアのジャーナリストたちは何も言わない。
ただ、今回は事態があまりにも不当であるため、さすがに大勢の法律学者、独立系のジャーナリスト、AfD以外の政治家までもが、一斉に疑問の声や警告を発した。それどころか、他のEU国や米国からも抗議や批判が届いている。しかし、主要メディアは皆、それを無視するか、あるいは、不当な非難を受けたかのような反応。
そして、CDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)、社民党、緑の党、左派党の政治家はというと、このあからさまなAfD潰しを、民主主義の防衛だとして正当化している。いったいドイツでは、何が起こっているのか?
AfD「極右」指定の衝撃
5月2日、フェーザー内相(社民党)が、憲法擁護庁がAfDを極右政党と認定したと発表した。極右政党に認定されたということは、政党禁止の前段階である。そのため、今、何人かの政治家が俄かに、AfDを禁止すべきだと主張し始めている。
憲法擁護庁というのは国内向けの諜報機関で、国内でテロや国家転覆が起こらないよう監視するのが本来の任務だ。ただし、内務省の管轄下にある組織で、独立機関ではなく、したがって中立は期待できない。さらに言うなら、政党の思想や、それが合法であるか否かを判定する権限など、本来は備わっていない。
ところが実際問題として、ここ数年、この憲法擁護庁が内務省により、全面的にAfDの駆逐のために投入され、あたかもそれらの権限があるような活動が進められてきた。そして、それを指揮していたのがフェーザー内相だ。
ちなみにフェーザー氏は左翼過激派であるアンティファなどとも繋がりがあり、「民主主義にとって危険な思想は右翼だけ」と公言している人物だ。内相であった4年間を通して、左派でないものは全て弾劾することを試みてきた。